SIMロック解除義務化の議論は雲を掴む感が強い

総務省が設置する研究会でSIMロック解除を義務化するという方針が決まり、近々、政策としてSIMロック解除の方針が固まるようです。この提言、方針決定をきっかけにネットではSIMロック解除について喧々諤々とまでは言いませんが、多くの方が一言もの申すと意見を表明されています。「端末が高くなる」「安易な解除は余計に利用者を混乱させる」「MVNOの地位が高まる」「iPhoneが売れなくなる」などもっともらしいものから、よくわからないものまで様々な予想がなされています。

義務か決定を伝えるNHKのニュース

しかし解除後の競争がどうなるかは不透明です。前提となる解除のルールが決まらない段階での議論の限界となのかもしれません。どのような解除ルールが制定されるかは不明ですが、ただ単に解除を義務づけるだけなら今と状況は全く変わらないでしょう。競争の主導権を大手3社が握っている状況で、解除だけを義務づけても、大手3社体制という枠内で競争制度の修正に留まるはずです。一時的に料金が下がっても、何かと理由をつけてジリジリ上がっていくでしょう。

もし通信業界の競争を促して利用者へと利益を還元しようとするなら、どのような環境が消費者の利益になるかを明確にする必要があります。MVNO業者が乱立して、月々980円で200kbpsという通信環境を理想としているのでしょうか。まあ、理想の環境はいろいろあっていいとは思いますが、現状を変えて新しい環境へと移行させるなら緻密な制度設計が必要になります。しかし総務省(政策案を検討した有識者)にそこまでの緻密さがあるかはまだ見えてきません。

少なくとも総務省はSIMロック解除を義務化することで、どのような競争が発生し、その競争がどのように利用者に還元されるかを明確化する必要があるでしょう。そこからユーザーベースで議論が進めばいいと考えます。本当の議論はそこからスタートするはずです。しかし今の流れは結論ありきに見えて、消費者がメリットを受けることに繋がらない気がます。SIMロック解除義務化はあまりいい予感はしません。

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