昨日の2.5GHz帯割当騒動を次期iPhoneがTD-LTEに対応する前提でみてみると…

昨日の深夜に日経が配信した「総務省、KDDI系UQに周波数追加割り当て」という記事がちょっとした騒動を起こしました。記事の真偽を総務省に確かめたWCP(ソフトバンク側)も、今回の2.5GHz帯の追加割当がUQ(KDDI側)に決定していると掴んだようです。

その後のソフトバンク側の対応は凄まじいものでした。孫社長が技術担当の役員を連れて総務省に直談判、決定の延期、事業者からの意見聴取の要望を伝え、それが実現されない場合は行政訴訟も辞さない考えを伝えたと報道されています。さらに孫社長は記者会見やTwitterで総務省とKDDIの癒着(天下り)、密室での決定を批判して、必至の抵抗をみせました。

しかし、抗議した当人も今回の審査基準でKDDI側が有利なこと、直談判で決定が覆らないことは知っているはずです。なのにこの行動、少し不合理な気がしますが、「次期iPhoneがTD-LTEに対応する」という前提でみると少し違った状況が見えてきます。

まず、審査基準上不利なソフトバンク側の第一の目標は「KDDI側に劣らない周波数幅を確保する」ことでした。もちろんTD-LTE対応の次期iPhoneの販売で競争する上でこれは重要です。今回の決定のように「KDDI側が50MHz、ソフトバンク側が20MHz」ではカタログ上も勝負になりません。それを避ける為にソフトバンク側は10MHzづつの配分を要望して妥協した面もありました。さらにいえば、10MHzづつの割当なら、すぐにiPhoneが対応するTD-LTEと互換性のある周波数は「KDDI側10MHz、ソフトバンク側30MHz」となりソフトバンク側が優位に立てる、というトリックも隠されています(ソフトバンク側はバンド内のCAが前提)。

しかしKDDI側に20MHzの割当が決定した段階で、目標が変わった気がします。次の目標は「KDDI側の20MHzのサービスインを遅らせる」になったのではないでしょうか。KDDI側は追加で割り当てられた20MHzを今年度中にTD-LTEに対応した方式でサービスを開始する計画を持っています。これを遅らせることで次期iPhoneの販売でソフトバンク側が独占的にTD-LTEに対応する「優位な時間」を長引かせることができます。

この時間稼ぎに「猛抗議」「行政訴訟」「天下り批判」が使われている、そう解釈すると不可解な行動もそれほど不可解ではなくなる気がします。少し考え過ぎかもしれませんが、とにかくソフトバンク側は2.5GHz帯でのTD-LTEに社運をかけていることは間違いなさそうです。

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