Amazonに反抗する出版社、Amazonを利用する出版社

Amazonが日本の出版業界に与えた影響は大き過ぎたのかもしれません。日本独特の出版流通制度がAmazonの存在と相容れないことが根本にあります。先日のニュースに「中小出版社 アマゾン出荷停止」というのがあり、中小出版社にとって再販制度の維持は死活問題であり、それに挑戦するAmazonの存在は許しがたいものになっているのでしょう。

一方でAmazonを利用して作品を大量に販売している出版社もあります。出版大手のKADOKAW(角川書店)は実際の書籍の販売だけでなくKindleストアで電子書籍のセールを頻繁に開催しています。今でも「オール カドカワ ゴールデンウィークセール」として131タイトルのKindle本が200円〜500円程度の価格設定で販売されています。

この対応の違いの背景はやはりインターネット通販、電子書籍への対応が出来る出版社、出来ない出版社の差なのでしょう。もちろん出版社側がネット通販に対応し、また電子書籍を作るのは簡単です。しかしその出版社が得意とする分野の読者がネットを利用していて、さらに電子書籍の購入・閲覧に慣れいてるかが問題になります。

カドカワ作品の読者には若者も多く、ネット通販を使い慣れ、更に言えばKindle端末、iPhone, iPad, Android端末を使いこなす読者も多くいます。また作品は娯楽、教養分野のものが多く通販や電子書籍との相性も良くなっています。一方でAmazonに反抗した出版社の作品は環境問題や教育、芸術関連の書籍が中心であり、ネット通販や電子書籍に馴染みにくい種類のものです。結果としてAmazonと対決する道をえらばらざるを得なかったのでしょう。

しかし時代の流れは電子書籍、ネット通販にあります。おそらく時代の流れを味方につけたAmazonはこの中小出版社の意向を無視し、今後も変わらず営業していくでしょう。それでも大多数の読者に影響はないと思います。

ただ再販制度のメリットである書籍の多様性は一時的に失われるかもしれません。この問題は更に電子書籍が普及すれば解決されそうですが、それには制作者側の対応だけでなく、読書側の対応も必要です。書籍の多様性を守るなら出版社は書店ルートの販売を諦めて、電子書籍化を急ぐしかなさそうですが、読者側も本棚に蔵書を並べる習慣を諦める必要が出てきそうです。今回の出荷停止は電子化へと動く過渡期の現象と言っていいかもしれません。