ソフトバンクのT-mobile買収前にアメリカでは「本当の戦い」が始まっている

ソフトバンクの孫社長が先週行なった講演会は様々な反響を呼んでいるようです。「ソフトバンク孫代表の米国プレゼン、メディアから酷評も – 関係者らの警戒は解けるか」に詳しく書かれていますが、現地メディアでは批判的な意見が多いようです。新参者への警戒心や競争激化に対する拒否感が背景にありそうですが、孫社長が目指す競争は既に始まりつつあります。

孫社長はアメリカ市場で「本当の戦いをしたい」とテレビ番組のインタビューに答えていました。その本当の戦いはT-mobile買収で始まるものではなく、既に前哨戦が始まったと言っていいでしょう。Sprintを除くアメリカ携帯通信大手3社は価格競争(プラン改訂)を始めています。(AT&T, Verizon and T-Mobile are waging price war, but where’s Sprint?

既に始まった価格競争はソフトバンクの買収がなくても市場は競争環境にあるという主張を裏付けます。寡占企業と名指しされた大手2社は買収阻止のために戦略的に値下げを行なっているようにも見えます。また値下げによって業界全体の収益水準は低下し、T-mobile買収によるメリットを少なくして、結果として買収を抑止する効果もあると考えられ、非常に高度な戦略で市場が動いていると思われます。

日本では総務省の意向を汲んでキャッシュバックを一斉に減額するとか、業界4位の企業の買収をあっさり認めてしまうとか、甘い競争がはびこっています。こういう馴れ合い市場を見限って、アメリカで「本当の戦い」がしたいという孫社長の気持ちも分からなくはないです。