案外あっさりだな、という印象でした。今朝、海外メディアが関係者の話として「買収断念」が報じられましたが、日経新聞もソフトバンク幹部の話として「交渉中断」を報じました。この交渉中断は実質的に買収断念であり、記事の中身は海外メディアと変わりません。ただ海外メディアと日経で情報源が複数あるっぽいので一連の買収断念報道の信憑性は高くなりました。
ではこの買収断念でソフトバンクはどう動くのでしょうか。同社はSprint買収当初、単独での再建を計画していました。しかしいつしか、大手2社の寡占、規模の優位性を強調するようになり、T-Mobile USの買収がSprint再建(米国携帯事業の収益化)の必要条件とするようになりました。
孫社長も講演会やメディアの取材に対して「周波数帯や技術はある。ただ、われわれには規模が必要で、ネットワークへの投資の効率性が必要だ」と答えています。要するにSprint単独でネットワークを整備するのは非効率ということでしょう。しかし今後は非効率な投資をする必要に迫られることになります。
また社長が言う「技術」も「周波数」も全てTD-LTE(Band41:日本ではAXGPとしてソフトバンクグループが運用)で使われるものであり、この周波数で全米をカバーするには途方も無い努力が必要になります。日本では先行してBand41のTD-LTE(AXGP)基地局が整備されていますが、5万局を設置しても実人口カバー率は92%(役所基準方式)です。
次期iPhoneではこのBand41のLTEに対応するのは間違いないようで、買収による規模のメリットを活かして一気にエリア拡大を進める目論見だったと思われます。しかし広大なアメリカの国土で遍くBand41を使えるようにするには日本の数十倍の基地局が必要になり、単独での整備はやはり難しいのではないでしょうか。さらに言えば屋外をカバーしても屋内への電波の浸透は弱く、別に屋内局を設置する必要もあります。そんな莫大な投資にソフトバンクが取り組むか、取り組めるのか、8月8日の決算報告会で孫社長がどう説明するのか、注目しています。
僕はすでに米国市場からの撤退も視野に検討が進められているのではないか?と考えます。そのくらいT-Mobile US買収断念は大きなことだと思います。
前日比9セント安で終わったSprint株の取引ですが、買収断念の報道が出た後の時間外取引で15%以上値を下げています。