ソフトバンク、米国の携帯通信事業からの撤退報道は本当なのか?

ソフトバンクグループは傘下の米国携帯通信大手「スプリント」の売却を検討していると報じられています(スプリント経営権、Tモバイルに譲渡か ソフトバンク)。2012年に買収して以来、孫社長は「苦戦中であるが回復軌道に何としてでも乗せる」と豪語していました。実際、業績の改善(といっても最終赤字は続いていますが)で直近の株価は急回復しており、ここからという時に売却報道が出ました。

ロイターが関係者の話として伝える

今回のソフトバンクのスプリント売却報道は米国のロイターが匿名の関係者の情報として伝えました。不確かなソース(匿名の関係者)ですが、買収関連のニュースではありがちなであり、これだけで報道を否定する根拠にはなりません。またソフトバンクの最近の事業の力の入れ方を考慮しても、今回の売却報道には一定の信ぴょう性がある気もします。なおソフトバンク側はこの報道を否定しています。

ちなみに売却が報じられたスプリントも、売却先として報じられたT-Mobile USも、そしてソフトバンクグループ株価は急騰しています。これだけ市場に評価されるなら売却するのも筋は悪くなさそうです。ソフトバンクの業績の足を引っ張り続けていたスプリントですが、これでソフトバンクは重い足枷から解放されるのかもしれません。

売却の残念な部分

ソフトバンクの孫社長は「大ボラ吹き」と自称しますが、その大ボラに夢のあるストーリーを乗せることを得意としています。スプリント買収時は「アメリカで勝負したい」という人生の夢をかけているとしていました。またアメリカの通信環境を良くしたいという大義も掲げていました。しかしその大義も夢も道半ばで諦めてしまうとすれば残念です。

またアメリカ渡航時の通信料金を大幅に節約できる「アメリカ放題」もサービスの先行きは不透明です。アメリカ放題のサービス品質には若干の不満点はあったようですが、それでも「海外渡航時の利便性」という新しい競争軸を用意して、それを引っ張ってきたサービスであるのは確かです。アメリカ放題がなくなるとすれば、スプリント売却で最も残念なことになりそうです。

関心はARM社へ

ソフトバンクは2016年にARM社を買収してIoTで重要な地位を占める企業の買収に成功しました。今はこの企業の成長力、影響力にグループ全体の行方をかけているのでしょう。最も身近なIoT端末であるAmazon dashボタンにもARMのチップが搭載されています。またAppleがMacBook Proの省電力処理専用にARMのチップを採用するなんて噂もあります。

ソフトバンクというより孫社長はARMを通して、スプリントで成し得なかった夢を実現するのでしょうか。ただ孫社長の国内通信事業への興味は下がったままです。iPhoneを国内で唯一販売していた時の鼻息の荒さはもうありません。