ドコモ、au、ソフトバンクの横並び料金は価格カルテルなのか?

昨日のKDDIによる新料金プラン発表で音声通話定額料金は3社とも2700円(スマホ)、データ定額料金は2GB(3500円)、5GB(5000円)で横並びとなりました。このことを問われた田中社長も「横並びで申し訳ないが」と発言しています。

では、これが価格カルテルに該当するのでしょうか。消費者にとっては不利益な横並びであり、さらに多くの人には値上げとなることからネット上にはカルテルだとする意見が多くみられます。しかし、カルテルの成立要件は横並び料金の設定より、もう少し厳しくなっています。

一般的に認識されているカルテルの成立要件は

(1) 独立した複数の事業者による行為であること
(2) 行為要件としての共同行為と相互拘束
(3) 公共の利益に反すること
(4) 一定の取引分野の競争を実質的に制限すること

となっています。素人目で今回のケースと照らし合わせると

(1)は無条件で今回のケースは満たすことになるでしょう。

(2)の共同行為については「意思の連絡」が必要となります。「意思の連絡」はなにも文書での合意確認や会合での意見交換が必要ではなく、米国のように「黙示の合意」で足りるとする学説が有力とされます。しかし日本の実際の判例は「どの会合」で「どのような合意」があったかを特定できなかったことから独占禁止法違反に当たらないとするものが複数あります。

(3)にも多少の議論の余地はあるかもしれませんが、3社とも設備投資や研究開発への投資、人件費の支払いなどを十分に行なった上で多額の利益を上げており、横並び料金で利益を維持することが公共の利益になるとは考えにくそうです。

(4)の競争の実質的制限に当てはまるにはカルテル参加企業(3社の場合)で50〜70%以上のシェアを持っているケースが該当するとされます。これはもちろん今回の3社にも当てはまります。

やはり今回のケースも(2)が争点になるのでしょう。もちろん3社が会合などで相談して価格を決めている事実はないでしょう。あったとしても各社がドコモのプランに追随するという「黙示の合意」に留まります。この「黙示の合意」でカルテルの違法性を認定するのは現状では難しいようです。今回のようなケースをカルテルとして排除する機運は高まっているようですが、現状ではそうした環境にはないようです。

ただ、もし公正取引委員会が今回のケースを摘発するとすれば、ソフトバンクが観測気球として上げた「VoLTE時代を見据えた革新的な料金プラン」とその改訂、さらには撤回、ドコモのコピープランの提示にいたる一連の立ち回りが突破口になる可能性を感じます。

参考:御器谷法律事務所 独禁法−カルテル
   公正取引委員会カルテル・入札談合における審査の対象・要件事実・状況証拠(PDF)