新しいiPhone SEはiPhoneの「進化」か「退化」か

Appleは4月15日(日付は16日)深夜に新しいiPhone SEを発表しました。これまでのiPhone 5sをベースとしたデザインをiPhone 8をベースとしたものに変更しつつ、搭載チップをiPhone 11と同等にするなどで機能・性能と価格を両立させた機種となっています。

Face IDからTouch IDへ

iPhone 11とiPhone SEで最も異なるのがロック解除などで使う生体認証の方法でしょう。iPhone Xから導入されたFace IDTouch IDに変わる生体認証の方法として以降に発売されたiPhoneやiPadに搭載されるようになりました。認証方法としては指紋か顔かで一長一短があり、どちらが優れているとは一概に言えないのですが、Apple Payの認証ではiPhoneを決済端末にタッチさせる時に自然な動きでTouch IDが使えたのは事実です。

またマスクを着用している時にはFace IDがほとんど使えないためTouch IDの方が便利と感じるユーザーも多くいるかもしれません。もしかしたらFace IDがTouch IDになったiPhone SEは古い機能を再び載せただけなのですが、状況の変化などもあって「進化した」と言ってもいいのかもしれません。

カメラ、センサー、ディスプレイ

一方で最新のiPhoneが発表される時には必ず強調されるカメラの性能はフロントカメラ、バックカメラ(空間認識センサーを含む)ともにハイエンド機種に比べて見劣りする性能となっています。それでも人を昼間に撮影したり、風景を撮影したりなどの基本的な使い方では問題を感じることは少ないと思われます。また空間認識センサーとしてiPhone 11から使えるようになった超広帯域通信はiPhone SEでは省略されるなど、Appleが今後提供するかもしれない最新機能を新しいiPhone SEでは使えない可能性はあります。

さらにディスプレイも有機ELディスプレイに慣れた人にはiPhone SEのディスプレイの表現力に物足りなさを感じるかもしれません。iPhone XからiPhone 11への機種変更でもディスプレイの違いが感じたのですが、これは他の有機ELディスプレイ搭載機種からiPhone SEへと機種変更する際でも同様だと思われます。

こうした諸機能の省略、諸性能の低下はハイエンドモデルを最先端のiPhoneという枠組みで考えると「退化」であることは間違いありません。

Appleが考える基本性能

発表されたiPhone SEのスペックを見る限り、初代モデル同様に低価格を実現するため、多くの最先端機能を省略した機種といって差支えなさそうです。ただAppleは価格のみを重視して機能を省略したのではなく、それぞれに優先順位をつけて搭載するか省略するかを決めているはずです。

要するに今回、iPhone SEに搭載された機能はAppleがiPhoneの基本的なものと考えていることになるでしょう。ハイエンドモデルのiPhoneに搭載される機能は多くの人が今すぐに使いこなすことが難しい(アプリが対応していないケースも多い)ものもあり、この基本機能だけで多くの人が満足できるのも事実です。そう考えると新しいiPhone SEは初代同様、長く売れ続ける機種になると考えられます。