「Appleは任天堂を買収すべき」なのか?

金融専門誌「バロンズ」が「アップルよ、任天堂を買収すべし」とする記事を掲載し、その影響で任天堂の株価が上昇しているとニュースになっています。確かにApple任天堂は面白い組み合わせですが、そう単純なものではないはずです。

アプリで他社製品と差別化

Appleが任天堂を買収したとすれば、自社端末(iPhone、iPad)に優先的に任天堂のゲームアプリを配信し、他社製品よりも面白い端末という印象を消費者に与えることはできるでしょう。任天堂が初めて本格的に制作したスマホアプリ「スーパーマリオラン」はiOS端末向けに優先的に配信され、それなりに成功を収めました。またApple TV(Appleのテレビ戦略と任天堂の家庭用ゲーム機が融合すれば、Appleは新たな顧客層の開拓も可能かもしれません。

Appleによる任天堂の買収には上記メリットが簡単に思いつき、また任天堂の株価が割安な水準にあることなどから、同誌は「アップルよ、任天堂を買収すべし」と刺激的なタイトルで煽っています。この煽りに反応して任天堂の株価が上昇しているのですが、iOSアプリのゲームと任天堂の家庭用ゲーム機ではユーザー層も遊ぶシーンも微妙に異なっており、事はそれほど単純ではないと考えます。

スーパーマリオランは成功したか?

任天堂がスマホアプリへの参入タイトルとして大々的に配信したスーパーマリオランはAppleの発表イベントでも紹介され、大きな期待を受けてリリースされました。マリオの知名度と任天堂への期待から多くの配信数を記録できたのですが、課金方法やゲームのボリューム感などで消費者の感覚と配信側の感覚が少しずれていたように思います。結果としてヒットアプリになったのは間違い無いのですが、大ヒットタイトルまでには至らなかったと思われます。

任天堂がこれまで作ってきたゲームとこれから作っていくゲーム、理想とする課金方法などがスマートフォンとあまり相性が高く無いのかもしれません。または任天堂側に自社コンテンツをスマホ向けにアレンジするノウハウが少ない可能性もあります。この問題がAppleに買収されてすぐに解決するとも考えにくく、任天堂に成長余地が生まれると考えるのは早計な気がします。

Apple側にしてもこれまで自社製品を「創造的な製品」と位置付けてブランディングをしてきたのですが、任天堂買収でiPhoneやiPadにゲーム端末という新しい色が加わることで、ブランドイメージがぼやけてしまうデメリットはあるでしょう。これらを総合して考えると、バロンズの記事のような単純なものでは無いと考えます。