「Appleが任天堂を買収(?)」というニュースへの違和感

Appleは毎年様々な企業を買収しています。最近ではApple Musicの母体となったBeatsやApple News+の母体となったTextureの買収が話題になりましたが、Appleによる企業買収は基本的に技術を持つ中小企業が中心となっています。にも関わらず、定期的に「Appleが任天堂を買収(?)」といったコラムが投資系のニュースサイトに掲載されます。最近もBusiness Journalが「アップル、任天堂を買収との観測広まる」として記事を掲載しているのですが、あまり筋のいい記事ではありません。

両社にメリットが少ない

Apple任天堂もどちらも世界を舞台に活躍する企業で、特定の分野で圧倒的な競争力を持つ企業です。両社の関係はAppleの発表イベントに任天堂の社長が登壇し、またクックCEOが任天堂の本社を訪れるなど良好な関係を保っています。ただ良好な関係が買収などによる経営の統合に直結するかは別問題です。

任天堂にとってスマートフォン分野への進出は課題ではありますが、同社が得意とする家庭用ゲーム機分野でのさらなる成長を目指していくのが王道でしょう。仮に同社が家庭用ゲーム機に見切りをつけたとして、さらにスマートフォンでの成長に賭けてたとしても、iOS偏重となりうるAppleとの経営統合はあまり筋のいい話ではなさそうです。またAppleが始める「Apple Arcade」も成功するか否かは不透明であり、そこに賭けて買収を受け入れるというのは非現実的でしょう。

一方でAppleとしても任天堂と良好な関係を保っておけば、一部タイトルの先行配信独占配信といったことで両社にとってメリットのある事業展開が可能になります。Appleが全くノウハウを持たない家庭用ゲーム機を主戦場とする企業を買収する必要はないでしょう。

期待感は理解できるが

確かに任天堂のコンテンツとApple製品が融合すれば、面白い「何か」が生まれそうで、そこに期待するのは理解できます。しかし前述のように両社にとってメリットの少なそうな買収を現実的なものとして報道するのには違和感を感じます。Appleにしろ任天堂にしろ、その企業の動静は常に話題になります。この両社の買収劇となれば大きな話題になることは確実で、それっぽい見出しをつければメディアへのアクセスが増えるのも確かでしょう。

だからと言ってそんなニュースを乱造してしまうのは非常に危ういことだとも感じます。なんだかあまりいい気持ちのしないニュースでした。