ソフトバンクが興味深いプレスリリースを出しています(通信衛星を利用したLTE高速無線中継回線の実用化に向けた検証試験に成功)。これまでも同社は衛星通信を用いて、基地局とコアネットワークをつなぐ取り組みを3G通信で行ってきましたが、これをLTEにも拡大させるようです。
衛星通信を使うので基地局まで光ファイバーを敷設する必要がなく、山間部や離島ではエリア構築を安価に行えるメリットがあるとしています。また通信速度は実測値で100Mbpsを達成しているとし、衛星通信を用いているからといって通信速度が遅いことはなさそうです。
しかし一つ問題はあります。一般的な通信衛星は3.6万キロ上空にあり、往復で7.2万キロ、光の速さでも0.24秒かかります。要するにデータを送信するだけで240msの遅延が生じます。今回のソフトバンクのLTE通信衛星もおそらく静止軌道の衛星を使っていると思われます。
また相手からのデータを受信するのにも同等の遅延があり、スピードテストの「PING」で言えば480msという値になります(最低でも)。これにネットワーク自身の遅延を含めると500ms台の遅延が発生しそうです。
これは最近のモバイル通信になれた人には少し苦痛に感じるレベルでしょう。またiPhoneでも利用可能になったVoLTEの遅延は100ms以内であり、衛星を用いたLTEではVoLTEを使うことはできなさそうです。衛星を用いたLTE通信はデータ通信だけでなく、通話でも快適に使える技術ではないと思います。
ソフトバンクのケニアでの衛星通信によるエリア化実証実験(3G) |
衛星によるLTEのエリア化技術はあくまで僻地や離島のLTE化を担う存在として位置付けた方が良さそうです。もしこの技術を多くの利用者がいる場所で使えば、ネットワークへの信頼性は大きく下がってしまうと思われます。