携帯料金官製値下げ騒動、いったい誰が得をしたのか

昨年の9月頃、急に首相官邸周辺から携帯電話値下げに向けた政策を検討するようにとの指示が出ました。その指示の結果、今年に入って携帯電話の販売・契約に関する環境は大きく変わっています。いったいどういう顛末で、どういう結果を残そうとしているのでしょうか。

首相の肝いりから一転

携帯電話料金の見直しは国民の家計負担軽減を目指して発案されたとされます。官邸の発案に関与したのが総務省の桜井次官だったとされ、その後、官房長官から首相へと政策が上げられ、高市総務大臣に値下げの枠組み作りが任されることとなりました

しかしNTTは収益源である移動通信部門に手を入れられることを嫌い、公社時代から培っている持ち前の政治力を発揮したとされます。NTTの巻き返しに会い、この頃にはすでに官邸側が値下げに対して興味を失っていたとの報道もあります。その結果、タスクフォースではNTT側(通信事業者側)のペースで議論が進みます。

議論の過程でNTTは販売奨励金(キャッシュバック)の削減や実質0円廃止など、かねてから求められていた体質改善を、料金見直し・長期ユーザーの優遇という大義名分のもとに進めていきます。もちろんキャッシュバックが減る分、NTTは経費削減が出来て利益を上げることができます。まさにNTTにとって渡りに船だったのかもしれません。

2年契約の見直しはガス抜き程度

一方、消費者からの評判の良くない2年契約と違約金のセットは、ようやく改善の方向に進むようです。しかしこれも大手各社が足並みをそろえて、キャッシュバックの抑制とセットで条件改善へと向かうため、事業者側に大きなリスクはなさそうです。

消費者に取っても「2年縛り」とも言われる契約から解放されることで、一見すると契約的に自由になった感じられるようになるかもしれません。しかしこれまでも違約金はMNP先のキャリアのショップが負担していたため、実質的にはあまり関係ありませんでした。なんとなく自由になった感じがするだけです。

結局キャリア側がいびつな商習慣を解消して、経費削減に成功したというのが今回の官製値下げ騒動の顛末ではないでしょうか。

なぜこんな結果になったのか

そもそも官製値下げという枠組みが間違っていたと考えます。民間企業同士の競争に直接政府が介入するべきではありませんでした。もし介入するなら競争を促す環境を整備することが唯一取られるべき政策でしょう。MVNOの市場拡大はその政策に則って進められています。これを伸ばすことで大手キャリアを競争に巻き込んでいくべきだったのでしょう。

そしてもう一つ重要なのがNTTの政治力です。民間企業に変な政治力を与えている現状がいびつなのは間違いありません。KDDIもソフトバンクも文句を言う時はその政治力を批判しますが、今回はその政治力にぶら下がって利益を得ています。いつも総務省に批判的な言動を繰り返していた孫正義社長もニヤニヤしながら「大人の対応」ととぼけていました。そこには全く競争原理は働かず、今回の中途半端な結果を導いた最大の原因になっていると考えます。

日本の固まってしまった市場構造を変えることができるのは外圧だけと昔から言われています。日本の消費者が外圧(AppleかGoogleか?それともサムスンか?)に期待するようになっては市場は暗いかもしれません。

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