Appleはダークデータ分析企業の買収で何を目指すのか?

TechcrunchはAppleが構造化されていない情報をより有用な情報に再編する技術の専門企業「Lattice Data社」を買収したと報じています。すぐに何をやっているかよくわからない企業なのですが、買収額は2億ドル(約230億円)と比較的規模の大きな買収です。(Apple acquires AI company Lattice Data, a specialist in unstructured ‘dark data’, for $200M

Apple 銀座

「ダークデータ」から価値を引き出す

世界中(そしてネットワーク上)に溢れるデータ量は2012年時点で4.4ZB(ゼタは10の21乗)とされ、さらにそれは2年で約2倍のペースで増えています(IBMが推計)。このデータのうち、70〜80%は構造化されておらず、データの解析には使えない「無価値」なデータ=「ダークデータ」と言われています。「無価値」なデータを「有益」なデータに変換するのがLattice Data社の専門ということです。

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単に保存されているだけのデータ特定の人にし意味のわからないもの、そのようなダークデータがこの世の中に大量にあり、これを分析可能なデータとすることで、さらにう有益な情報を引き出すことができる、そう考えられています。Lattice Data社はこれらダークデータを機械学習によって分類、整理して使いやすくする研究を行なっているようです。

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自動で編纂された百科事典

同社のWebサイトでは人身売買の被害防止のため、アングラ掲示板への投稿から摘発のための有益な情報を引き出す研究、コンピュータによる百科事典の編纂、古生物学と地質学の文献データの統合に関する研究などがすでに実施されているようです。

iCloudのデータ分析にも利用?

AppleはLattice Data社を買収して何をしようとしているのでしょうか。思いつくのがiOS 10.3でAppleが始めたiCloud上の個人データの収集です。データは個人を特定することなく収集され、Siriなどの改善に役立てられるとされています。iCloud上には写真、メール、メモ帳、連絡先など様々なデータが存在します。それぞれ単体で見れば分析できない、もしくは分析しても意味のないデータかもしれませんが、それらを大量に集約すれば何か意味のあるデータ分析が可能になるのかもしれません。

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例えば写真にある位置情報を集めることで、人がどんな場所で写真を撮っているかの判別が可能です。またそれをメールに添付、もしくはiCloudフォト共有で誰かに送信していれば、その写真に魅力的なものが写っていると推測もできます。機械学習で何が写っているかを判別すれば、何がその場所の魅力かもわかります。

Siri

このような情報を大量に蓄積させれば、「この近くの美味しいレストランはどこ?」のような質問に対するSiriの回答がより的確になります。これら情報を個人を特定せずに収集する際には、ダークデータの分類、整理という技術が応用できるような気もします。

AppleはAIを重要な技術だと認めており、今回のLattice Data社の買収もその基礎研究分野の拡充の可能性はあります。ただ製品やサービスへの応用も少なからずあるでしょう。どのような形で表に出てくるかは興味深いところです

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