iOS11の新機能である個人間送金サービスについて、その先駆者でもあるPayPalの最高経営責任者であるDan Schulman氏が一言発言しています。もちろんPayPalの個人間送金サービス「Venmo」はApple Payの最大のライバルになるはずですが、そのPayPal側はApple Payを脅威とは見ていないようです。(PayPal chief dismisses Apple Pay challenge)
OSの壁が大きく立ちはだかる
Apple Payの個人間送金サービスはまず米国で開始されますが、米国でもこのサービスを使える人は限定されます。そもそもiPhoneユーザーでなければApple Payを使うことはできず、送金相手もiPhoneユーザーである必要があります(送金、受け取りはiMessageを通じて行われ、入金はAppleが用意したカードにされるため)。これはApple Payの個人間送金サービスの大きな欠点です。
この点をDan Schulman氏は「オペレーティングシステムやデバイスの種類を問わず、個人同士のサービスに一貫した価値提案を提供している。それは我々が持っている強力な利点だ」として、PayPalはApple Payを恐るるに足らずと判断しているようです。仮にiPhoneのシェアが50%あったとしても、OSの制約があるためサービスの利便性はかなり低くなります。
例えば10人のサークルで会費徴収を個人間送金で行う場合、その全員がiPhoneユーザーであることはほぼあり得ません。親から子にお小遣いを個人間送金でするとしても、子供がiPhoneを使っているとも限りません。家族みんながiPhoneというケースもそれほど多くはありません。やはりOSの壁が大きく立ちはだかると思われます。この種のサービスはユーザーが多いことはそのまま利便性につながるので、PayPalのCEOの言葉を仮までもなく、この問題はかなり深刻です。
Apple Musicは壁を取り払って成功
OSの壁で普及が遅れているサービスがiMessageやFacetimeです。これらはAppleが他社アプリをリリースせず、便利になっているにもかかわらず、イマイチ利用者が増えないサービスとなっています。Apple Pay(個人間送金)もOSの壁を取り払わない限り、これらサービスの二の舞になりかねません。
一方でApple Musicは早い段階でAndroid向けのアプリがリリースされ、iPhoneユーザーでなくても利用できるようになっています。この取り組みも功を奏しているのか、Apple Musicは先行のSpotifyを猛烈に追い上げています。このApple Musicの成功をApple Payの個人間送金でも再現するなら、Android端末対応が必須になると思います。