LTEでの通信に対応したApple Watch Series 3は一部ファンには期待度の高い製品になっています。当初からLTE対応とされていたので、最近の4Gと呼ばれる区分には属さない比較的低速な通信速度になると予想されていましたが、どうやらApple Watch Series 3はカテゴリー1の規格に準ずる製品のようです。
下り最大10Mbps、上り最大5Mbps
最近の4G通信は下り最大500Mbps、800Mbpsといった数字の並ぶ世界ですが、数年前(iPhone 5時代)のLTEは下り最大35Mbpsという時代でした。このiPhone5はカテゴリー3に対応した端末なので、カテゴリー1のApple Watch Series 3(20MHz利用時下り最大10Mbps、上り最大5Mbps)はさらに古い規格に準じた製品になります。ただ規格自体は古くからあるとはいえ、最近のIotブームで見直されている規格でもあり、Apple Watchでの採用でカテゴリー1がさらに注目される規格になる可能性は大いに考えられます。
カテゴリー1の規格のメリットとして通信速度を向上させるためのMIMOを使わないことで消費電力を抑えられるという点があります。これはバッテリー容量の小さなApple Watchにもぴったりです。またアンテナ構造が単純なため小さなApple Watchにも組み込みやすいメリットもあります。Apple Watchでは大きな写真を閲覧することも、高画質な動画を閲覧することもなさそうなので、通信速度よりも消費電力を優先したカテゴリー1が向いています。比較的データ通信量の多いストリーミングの音楽再生(Apple Music)も1Mbpsもあれば十分なので問題はないでしょう。
キャリア、利用周波数によって通信速度が変わる
Apple Watchではそれほど高速通信は必要とされないので、実用面で問題になることは少ないかもしれませんが、利用場所や通信キャリアの組み合わせで下り最大10Mbpsにならない場所も多く出てきそうです。日本で使えるApple Watch Series 3のLTEバンドは1(ドコモ、au、ソフトバンク)、3(ドコモ、ワイモバイル?)、8(ソフトバンク)、18(au)、19(ドコモ)ですが、このうち下り最大10Mbpsを実現できるバンドは少ないのが現状です。
例えばauはローカルエリアをバンド18でカバーしていますが、通話用に確保している周波数があるためLTEには10MHzしか使えず、下り最大10Mbpsは実現できません。これはソフトバンクのバンド8(プラチナバンド)も同様で、15MHz幅しか持たない帯域のうち10MHzしかLTEに割り当てておらず、バンド8でカバーされているエリアではApple Watchで10Mbpsの通信はできません。
さらに言えば、最近の4Gは複数のバンドを合わせて使う技術(キャリアアグリゲーション)で混雑を回避しています。このキャリアアグリゲーションが使えないApple Watchは通信の混雑に弱い端末になる可能性があります。カテゴリー1の端末であるため理論上の最大速度が低くく、これに混雑が重なることで一頃よく言われた「パケ詰まり」がApple Watchで再び起こる可能性は否定できないでしょう。