ステージマネージャでどこまでiPadが便利になるか

Appleは2022年のWWDCでiPadOSの新機能としてステージマネージャを発表しました。この機能によってiPadはいよいよ本格的なマルチタスクが可能になると説明されましたが、Appleはステージマネージャの安定性確保に苦心しているようで、正式版のリリースが遅れています。このステージマネージャはiPadをどこまで便利にしてくれるのでしょうか。

iPadの大きな転換点に

iPadは初代モデルの発売当初から一つのアプリだけを使うことを前提に設計されてきました。その後、Sprit Viewなどで複数のアプリを並行して使う機能が提供されたのですが、どうしてもアプリを表示する画面が小さくなり、作業効率はそれほどよくなりませんでした。また複数のアプリを切り替えながら使うにしても、一旦切り替え画面に遷移してアプリを切り替える必要があり、iPadで複数のアプリを横断的に使うのは難しいのが実態です。

これを変えてくれると期待されているのがステージマネージャです。ステージマネージャでは指定したアプリを一つのグループにしてアプリの切り替えをスムーズに行え、またアプリごとにウィンドサイズを指定して、複数のアプリを立ち上げても表示サイズを犠牲にせずに作業を進めることができます。Pagesで文書を作り、その中に写真アプリから写真を貼り付け、Numbersで作ったグラフを入れ込む。こうした単純な作業でもアプリをすばやく切り替えられることで作業効率は上がりそうです。

それ以外にも、メモアプリに記したアイディアをインターネットの情報と照らし合わせてしっかりとした企画書に仕上げていく、メールで送られてくる日報のデータをNumbersで集計するといった複数のアプリを跨いで行う作業もiPadで効率的にできるようになると期待されています。これでMacが不要になるといったら言い過ぎかもしれませんが、処理が軽く、大きな画面がいらない作業はほぼiPadの守備範囲に入るのではないでしょうか。ステージマネージャが期待通りの動きをしてくれれば、iPadの用途が一気に広がることになるでしょう。

不安定さが不安

しかしベータ版でテスト中のステージマネージャ使い勝手はあまりよくないようです。複数のアプリがスムーズに切り替えられるのが魅力なはずなのに、複数のアプリを立ち上げると落ちてしまったり、動作が遅くなってしまったり、また外部ディスプレイ機能でアプリの連携がうまくいかなかったり、ファイルの移動ができなかったり、とにかく評判はあまりよくありません。

Appleはステージマネージャの実装を遅らせることで安定性の向上を目指していますが、実際どの程度の完成度で正式リリースとなるかはまだ不透明です。また外部ディスプレイへの対応は「年内」とさらに実装が延期されています。もし中途半端な状態でステージマネージャが公開されると、ユーザー間に「やっぱりiPadでマルチタスクは無理なんだ」という認識が広がりそうで、Appleはぜひ完璧な状態での公開に向けて頑張ってほしいと思っています。