昨年Sprint社を買収してアメリカ市場に参入したソフトバンクですが、矢継ぎ早に次の買収先としてT-mobile US(の親会社ドイツテレコム)と交渉していました。しかしアメリカの規制当局からは買収に対して懐疑的な反応しか得られなかったと報じられています。
Sprint社の会長であり、ソフトバンクの社長である孫氏はそれで挫けるような性格ではありません。来週の11日に米国で講演会を開いて大手3社体制の競争環境が社会にどれだけ貢献するかを説明するようです。まだまだT-mobile US買収を諦めていないようです。
しかし、売り主になるドイツテレコムは少し腰が引けている印象です。「ドイツテレコムCEO:TモバイルUSは単独で生き残り可能」と報じられているように、一つの選択肢としてSprintへのT-mobile US株売却があることは認めていますが、それにこだわる必要はないとの立場に変わりつつあるようです。
これはソフトバンクのアメリカ戦略を大きく揺るがすものになりそうです。僕の見立てではSprint社を単独で業績回復へと導くことは当初から想定されておらず、ソフトバンクとしてはT-mobile USの買収を含めてアメリカ市場での地位確立を狙っていたと思われます。
ソフトバンクは大手3社体制になると競争が起こりにくくなることを日本市場の経験から熟知しています。そして競争が起こりにくくなれば、キャリアが得る利益が大きくなることも知っています。その利益で遅れているインフラを整備して大手2社へと名実ともに追いつく、そういうストーリーを描いていたと想像します。しかしこの構想が頓挫してしまえば、Sprintの再建を単独で進める必要に迫られます。
米国では日本のときのようにiPhoneの独占販売はもともとありません。またソフトバンクの得意なTD-LTEはサービスインフラをゼロから作る必要があります。非常に困難な企業再建が待ち受けていると予想します。