プラチナバンド(900MHz帯)を使ったLTEのサービス開始は、7月から、4月から、夏からとソフトバンクの説明が変遷しています。iPhone 5s/5cや2013年冬モデル以降の機種がこのプラチナLTEに対応しており、auの800MHz帯の広大なエリアに対抗する切り札として期待されています。
しかし前述のようにソフトバンクは開始時期について予定を何度も変更しています。まず総務省から900MHz帯の電波を割り当てられる際に提出した計画では2014年7月からサービス開始としています。2014年4月には既存利用者の移動を完了させ、7月からサービス開始という非常に迅速な計画を提示していました。
さらに2013年9月のiPhone 5s/5c発売後、auのLTEにエリア面で攻勢をかけられると「サービス開始を4月に前倒し」と計画を変更しました。4月は一部地域での開始で、垂直立ち上げとはいかないが、前倒しで開始するとしました。
その後、総務省への移行状況の報告の遅延、移行促進措置自体の遅延が表面化し、結果的に4月開始には間に合いませんでした。これを受けて5月の決算発表時に孫社長は「夏にも開始できる」と、遅延を認めた上で改めて開始時期を設定しました。
では、何がプラチナLTE開始の障害になったいるのでしょうか。最大の原因は「既存利用者」の存在であり、既存利用者は大きく分ければMCA無線システム(トラックやタクシーなどの無線)とRFID(無線ICタグ)に分かれます。またMCA無線システムは災害時の緊急連絡網としても使われるなど、間違いがあってはいけない通信手段にもなっていました。
こうした既存利用者の存在もあり、ソフトバンクは「垂直立ち上げではなく、徐々に」としていました。
MCA無線システムについては免許保有者が比較的少なく、移行交渉や作業が比較的進みやすくはなっています。すでに端末利用者は2014年3月末時点で全体の98%が移行済みとなっています。孫社長が決算発表の席で「あと数社と最終的な交渉をしている段階」と言ったのはこのMCA無線システムのことだと思われます。
しかし問題はRFIDにありそうです。RFIDのうち免許が必要な機器でも同年3月末時点で移行が完了しているものが全体の68%に留まっています。免許が必要な機器は比較的高出力で運用されているものもあり、この移行が完了しなければプラチナLTEは十分な性能を発揮できないでしょう。また免許が不要な小出力のRFIDも多数残存しており、この回収も計画より遅れています。
免許の不要なRFIDは干渉シミュレーションでもある程度の残存を許容していますが、免許の必要なRFIDやMCA無線システムはプラチナLTE開始までに全て移行完了する必要がありそうです。それぞれ移行が進まない理由は
RFID免許局/登録局
(1)後継機種の開発・製造の遅延
(2)業務停止不可等 によるスケジュール調整の難航
(3)免許人都合による協議中断(組織体制変更、 人的リソース等の理由)
(4)後継機種がないことによる他後継機種選定の難航
(5)免許人による継続利用希望
(6)RFIDに関連する他システム改修の遅延
MCA端末局
(1)免許人の ご都合や販売代理店の人的リソースの制約等により、やむを得ず工事日程が延 期となった事案があった
(2)プログラム開発が必要な事案において、バグ 等の不具合が発生し、想定以上に作業が長期化したこと
(3)免許人から合意を 得ることができず、協議が長期化していること
とすぐに解決できなさそうな問題が並んでいます。印象としては夏の開始は難しそうなのですが、夏に開始できると豪語した孫社長が8月8日の決算発表でどう説明するか、それとも大逆転で7月中にサービスを開始できるのか注目しています。もし近々開始するとすれば、既存利用者があまりいない中国地方や東北地方などの一部県で始まるかもしれません。